実力養成編 10回目

  • 登記された抵当権の被担保債権につき転付命令が確定したときは,裁判所書記官は申し立てにより,その債権を取得した差押え債権者のために抵当権の移転登記を嘱託しなければならない(民執164条)
  • 登記原因「年月日民法第392条第2項による代位」の原因日付は,全額配当の場合には,共同抵当権者への配当実施の日である。なお,一部配当後残額の任意弁済又は配当があった場合は,残額の弁済の日となる
  • 元本確定前の根抵当権につき,担保すべき債権の範囲を変更して,特定債権のみとすることはできる

⇔特定債権のみを被担保債権とする根抵当権の設定はできない

  • 「平成○年○月○日以降の売買取引」のように,一定の期日以降に生じる債権を,根抵当権の債権の範囲として登記することができる
  • 合意解除を原因として根抵当権の優先の定めを廃止した場合,○番根抵当権優先の定めの変更の登記をする

⇔錯誤,無効,取り消された場合は,○番根抵当権優先の定め抹消の登記をする

  • 債務者が複数いる元本確定前の根抵当権(共用根抵当権)において,そのうちの一人が破産手続き開始の決定を受けたとしても,根抵当権全体として元本は確定しない。但し,破産手続き開始の決定を受けた者については,確定前にしかできない行為はできなくなる

cf.共有根抵当権

  • 根質権者が元本確定請求をしたことにより根質権の元本が確定した場合,根質権者は,元本確定の登記を単独で申請することができる(不登95Ⅱ)

cf.根抵当権

  • 登記所の管轄を異にする甲・乙両不動産に共同根抵当権を設定する合意に基づき仮登記された根抵当権が,本登記前に確定した場合であっても,甲不動産について本登記をした後にする乙不動産についての本登記は,共同根抵当権の追加設定として申請することができる

⇔原則:共同根抵当権の追加設定は元本確定後はできない

  • 共有根抵当権の元本が確定した後に,当該根抵当権の共有者の一人が被担保債権全部を第三者に譲渡した場合,共有根抵当権の被担保債権を1個の債権と考え,その譲渡額は当該登記の登記事項となる

⇔共有抵当権における債権の持分全部譲渡の場合(譲渡額の記録不要)

  • 所有権移転の仮登記がされた後,仮登記上の権利が移転した場合(1号仮登記)において,当該仮登記をを抹消するには,まず,仮登記上の権利の移転仮登記を抹消する必要がある

⇔所有権移転請求権の仮登記を抹消する場合において,当該請求権の移転請求権(2号仮登記)を取得している者は,登記上の利害関係人となる

  • 登記記録上の地目が農地の土地について,AからBへ死因贈与を原因とする始期付所有権移転仮登記がされた後,農地法所定の許可がされないままA,Bが順次死亡し,Aの相続人Cが相続登記をしている場合,Bの仮登記の抹消は,「年月日条件不成就」を原因として,Bの相続人全員を登記義務者,Cを登記権利者として申請することができる

cf.条件付遺贈(条件成就までに受遺者が死亡した場合は無効)

  • 仮登記自体には対抗力はなく,仮登記権利者は,登記の欠缺を主張できる第三者に対し,不動産の明け渡しを求めることはできない

⇔仮登記には順位保全効はある

  • 所有権移転仮登記後にされた賃借権設定登記の登記名義人は,その仮登記の本登記をする際の登記上の利害関係人になる
  • 借地借家法10条により対抗力を有する建物の登記名義人は,土地の登記記録上に登記名義を有していないため,仮登記に基づく本登記がされても,権利を害されることが登記記録上明らかな者とは言えない(承諾不要)
  • 変更登記が主登記でされている場合は,変更の主登記を得た抵当権者は,その変更の限度で仮登記に基づいて本登記を得た者に対抗できなくなるので,利害関係人にあたる
  • 原賃借権について登記がされていない場合には,転貸借について登記することができず,よって,転借権の仮登記もすることはできない
  • 承役地の通行方法を「徒歩及び軽自動車による通行」と限定して登記することはできる

⇔「徒歩及び軽自動車(長さ○メートル以下,幅○センチメートル以下,高さ○センチメートル以下の小型自家用乗用車1台)による通行」という形で,軽自動車の大きさ,及び台数を限定した形の登記をすることはできない

  • 地上権が地上建物登記によって対抗力が与えられている場合(借地権),当該土地に,別の地上権の設定登記をすることができる
  • 付属建物を新築する場合において,不動産工事の先取特権の保存登記を申請するときは,付属建物の設計図(図面を含む)の内容を証する情報を提供しなければならない
  • 共用部分である旨の登記は表題部にされる
  • 共用部分である旨の登記がされた場合には,以後権利に関する登記は一切することができない(共用部分とされた日の前の日を登記原因とするものも含む)
  • 敷地権の登記をするのに地目は関係ない(農地でも可)
  • 仮登記所有権(地上権・賃借権)は敷地権とすることができない
  • 存続期間が満了した地上権は,敷地権とすることができる
  • 不動産の共有持分を工場財団の組成物権とすることができる(他の共有者の同意不要)
  • 工場財団に属するものは,譲渡し又は所有権以外の権利(地上権など),差押え,仮差押え若しくは仮処分の目的とすることはできない
  • 会社が合併した場合には,直接存続会社(又は新設会社)名義で所有権保存の登記を申請することができる
  • 根抵当権の債務者である個人営業主が個人営業から株式会社に変更した場合,その根抵当権によって担保されるのは,個人営業主としての取引等から生じる債務だけであり,株式会社としての取引等から生じる債務は当然に担保されない
  • 登記官の過誤を理由として職権により更正登記をする際には,登記名義人が全く異なるような同一性のない場合でも,登記官の過誤という点を配慮して,職権による更正が認められている
  • 所有権移転登記の抹消登記が錯誤により無効であっても,抹消された移転登記自体が民法94条1項により無効である場合には,抹消された登記の回復の登記は認められない
  • 農地法所定の許可を得て所有権移転登記がされた共有農地について,所有者の持分の更正登記を申請するには,農地法の許可不要

⇔登記名義人について変動する所有権の更正登記は農地法の許可必要

  • 順位の変更に係わる抵当権に関してされている順位譲渡等の登記は,順位の変更によりその意義を失うこととなる場合であっても,これを職権で抹消するのは相当でない

cf.「順位変更による失効」を登記原因とする申請で抹消する